2000年4月に介護保険法が施行されて以降、様々な介護サービスが民間に出てきました。
高齢者の人口も増え、地域や利用者のニーズに合わせ、多様化していっています。
一方で、市場でのニーズはあっても、人材の確保、ケアの質、マーケティング、経営面で失敗し、廃止せざるを得ないサービス事業所も出てしまっています。
今回は介護サービス事業所向けに、どうやったらサービスに差別化をして地域で必要なサービスとして生き残っていけるか?
という疑問に、
実際にほぼ毎日満員状態のデイサービスで施設長をしていた際に考えていたノウハウを共有します。
ランチェスター経営戦略の活用
ランチェスター経営戦略って聞いたことありますか?
これは、元々第一次世界大戦の際の軍事戦略としてフレデリック・ランチェスターという人が考えたもので、後にビジネスのマーケティングでも応用出来るものとして多数の本が出ています。
ランチェスター経営戦略は、
①強者が弱者と戦う戦略
②弱者が強者と戦う戦略
の2つがあります。
強者が弱者と戦う戦略
強者が弱者と戦う戦略は、1対多数を予定した戦い方の戦略です。
広域戦闘をイメージしてみてください。
やり方としては、サービス(武器)としてのレベルはほぼ同じやり方で模倣し、大規模な広告や人員投下をすることで集客を勝ち取るという方法です。
サービスの質が同程度ならば、サービスの供給量で圧倒してしまえば勝ててしまいます。
例えば、ボクシングの世界チャンピオンの方がいたとしも、ボクサー50名を対決させたらアマチュアでも勝ててしまいますよね。さすがに。
ビジネスでも同じようなことは起きており、
利用者からするとは、「大手で有名なところはとりあえず安心で信頼できる。」
ってなったりします。
同じ技術力やサービス力を持っていても、同じ市場でそのまま戦っていては弱者は強者には勝てません。
弱者が強者と戦う戦略
弱者が強者と戦う戦略は、1対1の少数の局地戦に持ち込んで戦うという方法です。
ボクシングの世界チャンピオンが、アマチュアのボクサーと1対1の対決をしたら、チャンピオンが勝つでしょう。もしかすると、世界チャンピオンなら10人くらいの数の差は勝てるかもしれません。
ビジネスに置き換えると、1対1など少数の市場にさえ持ち込んでしまえば、勝負を決するのはサービスの質ということになります。
利用者からすると、「有名じゃないけど、今まさに私がしてほしい事にピンポイントなんですけどー!」
という感じですかね。
では、どうすれば少数の局地戦に持ち込むことができるのでしょうか?
・これから市場にニーズがあるがまだ参入がない分野で戦う
・集客のターゲットを絞って戦う
・大手がやらない部分のサービスを組み込む
など。
差別化へのポイント
数で勝負する事は、大手など限られたところでしか行うことが難しいです。
しかし、サービスの質を上げ、市場選びを工夫する事で戦いに生き残っていくことは可能です。
差別化させ生き残っていく為のポイントは、
・小さな市場(分野)でナンバー1を勝ち取りにいく。
・様々な視点で、関連のある付加価値をもった内容を組み込む。
というところです。順番に解説していきます。
小さな市場(分野)でナンバー1を取る
言葉の通り、小さな分野局地戦ができるところ探すという事、そしてその中で一番のサービスが出来るところになるという事です。
小さな市場や分野を見つけるには、まず市場を調査しましょう。
介護のビジネスの場合は『地域』の市場の中に、どんなサービスがあるのか、競合となり得るのはどこか等知っていく必要があります。
・地域に少ない介護保険サービス(訪問サービスが不足なら訪問導入など)
・他の参入がない保険外サービスとの混合(EC導入や付き添い、延長利用など)
・介護保険外サービスのみに特化(保険の規正縛られない自由選択のサービスの導入。)
・地域を絞る(都市部、田舎、人口多い少ないなど)
・利用者の対象を絞る(要支援、要介護、女性、男性、趣味趣向など)
・その他市場にあったらいいなというもの
など検討して行きます。
こうして、勝てそうだと思った分野に時間や人やコストを集中投下して、ナンバー1を取りにいきます。また、やっていく過程でノウハウを蓄積する事も出来ます。
様々な視点で、サービスに関連のある付加価値をもたせる
集中投下して勝負をかける分野が決まったら、
様々な視点や考えを混ぜ、検討していく中で使える良いところをサービス内容に導入していきます。検討している段階ではブレインストーミングなどで突拍子のない案を考えてみても良いですが、大事なのは最終的には関連のある付加価値を持たせるという事です。
これを行う事で、市場の中で価値のあるレアなサービスを行う事が出来るようになります。
どういう事か下記の例でみてみましょう。
現場で出来る差別化の具体例
デイサービスで「レクリエーションを差別化出来るものにしたい」という例で説明します。
①介護施設でレクリエーションに特化した事業所の例(下にいくほど、レアになります。)
【大体多くの施設ができている段階】
・利用者へのレクリエーションに力を入れているとPRし、軽度の認知症予防や
残存機能の維持の為のサービス提供の実施。
・活動カテゴリーが豊か(外出、工作、俳句、ゲーム、運動など)
・活動を行なってみてのモニタリングの共有ができている(日毎、月ごとなど)
・毎利用日で、活動時間がしっかりとれる体制になっている。
⬇︎
【行える事業所が限られてくる段階】
・認知症の症状、高次脳機能障害などの症状に合わせた効果のあるレクの提供。
・聴覚、視覚、麻痺など障害のある方でも行える活動の提供(専門性のある活動提供)。
・個別での対応
・活動のバリエーションがさらに豊富。(数百種類の活動が可能など)
・プロやボランティア、特技のある職員など揃っている体制
とそれぞれレクリエーションに関係ある部分ですが、やれる事業所が少なくなっていくので、もしやり始めた事業所は段々とレアになっていきます。
他の例もみてみましょう。
②工作や美術活動のレクリエーションに1点集中し力を入れてみた例
【大体多くの施設ができている段階】
・利用者へのレクリエーションに力を入れているとPRし、軽度の認知症予防や
残存機能の維持の為のサービス提供の実施。
・活動カテゴリーが豊か(外出、工作、俳句、ゲーム、運動など)
・活動を行なってみてのモニタリングの共有ができている(日毎、月ごとなど)
・毎利用日で、活動時間がしっかりとれる体制になっている。
ここは①と同じです。
⬇︎
【行える事業所が限られてくる段階】
・必ず工作や美術の時間を毎日作る。
・既存利用者の参加不参加は自由だが、何かしらの役割で参加できる仕組みができている。
・どの職員も工作レクの指導や補助、アイデアの創出など出来、新人向けにマニュアルもある。
・レクリエなど情報誌への出品。展覧会やコンクールへの出品もできる。
⬇︎
【地域で唯一の取り組みをしている段階】
・保育園や学校、芸術大学との連携し活動
・感性を養う為、美術館や博物館見学の機会提供
と、ここまでくると地域で『そこまでやってるとこはないよ』など言われ、関係者間の口コミでも広がるようになっていきます。
0→1で市場にないアイデアをもし生み出せたら、それは素晴らしい事ですが、
既存の介護の仕事でも、『付加価値をもたせられないか?』探してみると案外やれる事はあるのではないでしょうか。
経営陣で決める事だけでなく、現場だからこそ出来る事もいっぱいありそうです。
まとめ
差別化についてのポイントは、
・小さな分野でナンバーワンになる
・様々な視点で付加価値をもたせる
です!
そして、他のサービスが真似くらい極めると、サービスの市場内(地域内)にポジションが取れます。
『〜といえば、あそこだ!』という感じです。
そこまでブランディングが出来れば強いですね。
今回は以上です。
読んでいただきありがとうございました。
どこかでお役に立てたら幸いです。
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