新人介護職も知っとこう!介護施設が稼働率を上げる理由

介護の経営戦略

特養、老健、有料ホーム、デイサービスなど職場で稼働率を上げようと話があがる事も、もしかしたらあるのではないでしょうか。

僕自身もデイサービスの施設長をやっていて、稼働率を上げる、稼働率を維持するというところは結構意識していました。

ただ介護職になりたての時は、施設を継続する為にそこまで大事な要素ということは理解せず働いていた気がしています。

「稼働率上げようって言うけど、上がったらどうなるの?」って疑問はありませんか?

今回は介護施設にとっての稼働率を上げる意味について解説していきます。

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稼働率ってそもそも何?

稼働率は、言い換えると利用率とも同じです。施設の受け入れ定員のうち、どれだけの利用者さんが実際に利用したかの割合を意味します。

介護施設の定員は施設の大きさやサービス形態によって異なりますが、条例や法律で基準があり、受け入れ可能な定員数に限度があります。

こうした受け入れに制限があるのは、

・設備上ハード面に限りがある

・職員の対応のキャパオーバー

があるからです。

例えば、ベッドが20床しかない施設がニーズがあるからという理由で、30名の利用者を受け入れしてしまったらどうでしょうか?20名はベッドで寝れるけど、残りの10名は別のところで寝てもらわないといけなくなってしまいます。震災などの緊急時ならともかく、そのような状況は好ましくないですよね。

また、人手不足とはいえ職員一人で40名の利用者をみるなど、どうみてもキャパオーバーな状況になってしまうのは、命を預かっているサービスである以上リスクが大きいです。

その為、定員という概念があるのです。

稼働率(利用率)の算出方法は、

稼働率(利用率)※1ヶ月を基準とした場合
=1ヶ月の利用者の述べ利用回数 ÷   1ヶ月の施設の利用可能定員数

で算出できます。

例えば、利用定員が20名定員のデイサービスで、1ヶ月の述べ利用者数が500名であった場合は、

1ヶ月の述べ利用者数500名 ÷ 1ヶ月の利用可能定員600名

=稼働率 83.3% となります。

稼働率は、介護施設の経営において重要な分析指標の一つという事になります。

稼働率を上げる目的って何?

稼働率の最大値は100%です。これに近いほど高ければ、高収益で黒字経営を見込めますし、低ければ赤字経営になってしまう可能性も出てきます。

高いほど良さそうですが、その目的は何でしょうか?

稼働を上げ、黒字で収益を確保できるようになると

・社会インフラとしての介護事業の継続

・雇用の確保、職員への利得分配

・既存サービスへの投資による質の向上、新規事業への投資による新たな価値創造

などが行えるようになります。

介護事業の継続

特に『事業を継続する』という部分は、介護サービスに関わっている方を意識されている方は多いと思います。

介護施設はサービスを利用している方にとって、生活の基盤となるものです。

例えば介護中の家族にとっては、支援してくれるサービスが急になくなったら生活スタイルを変えなくてはいけない状況になってしまったりします。満足できるサービスを利用しているなら事業を継続してほしいものです。そうでないと困ってしまいます。

事業を継続するには、黒字化している事。

つまり、売上金(サービス事業で得られた報酬)が、運営上必要な支出金(人件費、施設管理費、手数料など)よりも高く維持する必要があります。

職員の雇用維持や分配

職員の雇用を維持するには、当たり前ですが給与の支払いを行っていく以上、一定以上の収益の確保が必須になってきます。みんなの生活がかかっているから当然ですよね。

また、収支の状況によって社員への給与や賞与にも影響出てきます。

給与面の待遇は、職員さんのモチベーションに大きく関わってくるものです。施設の稼働率が上がるよう頑張った先に給与アップや役職アップがあれば嬉しいですよね。「もっと頑張って、ここで働こう」という気にもなります。

サービスをもっと良くする為の投資

投資する事で現状の問題解決サービスの質の底上げを目指せます。

・求人や採用に広告を出し、人員不足を解決する。

・古くなった備品や設備を修繕したり、新しく購入する。

・利用者へのサービスに還元し、ニーズに応える。

・福利厚生を充実させて、職員が働きやすくする。

・研修や教育に力を入れ、職員の意欲やスキルアップに活用。

など。

稼働率が上げ、利益が確保出来れば、様々な活用ができるようになります。

サービスの質を上げる事は、使ってくれている利用者に還元されますし、働いている僕ら職員にも働きやすい環境にする要素になります。

稼働率をどれくらい上げればいいの?

では、稼働率ってどれくらい上げればいいのでしょうか?

結論としては、「高ければ高い方がいい!」です。

上記で説明したように、介護サービスは受け入れに定員数が決まっており、日毎で収益を上げるには限度があります。よく飲食店などがやっているように、土日や年末の忘年会シーズンの繁忙期で利益を確保し、閑散期で赤字でも、年間では黒字経営できているという状態には出来ないのです。

その為事業を継続していくには、高い稼働率で安定できるに越した事はありません。

ただ、受け入れ可能人数をオーバーして、稼働率100%超えにするのは、基本的に報酬返還の対象になるのでNGです。

現実的な高稼働というと、サービス業態によって異なりますが、特養やデイサービスなどでは90〜95%前後あたりが高いと言われるところとなります。

しかし、利用している方が高齢という事もあり、サービスの中止や変更など入れ替わりも激しいのがシニアを対象とする介護のビジネスです。そこに難しさがあります。入れ替わりがあっても、すぐ来て頂ける信頼をサービスの質を高くし努めていかなくてはなりません。

当たり前ですが、稼働率が上がったら利用者の人数は増えるわけですから、段々と忙しくなります。それでも、定員に限界はあるので慣れてしまえば回せるようになりますが、人員不足の問題職員への理解を同時に行っていく必要もあります。この辺りの覚悟はリーダーになる方は重要です。

また、サービスの業態や法人のやり方によりますが、介護施設の黒字化できる採算分岐点の稼働率は70%〜75%前後あたりが多いようです。※気になる方はググってみてください。

これ以下の稼働率で利益を確保するには、

・人件費やその他経費もより細かく節約する。

・介護度の高い利用者など単価が高い方の受け入れを増やす。

・様々な加算を導入し、報酬額を上げる。

などがいっそう必要になってきます。

まとめ

・介護サービスを続けるには、稼働率を高く維持する必要がある。

・高稼働で収益を確保する事で、利用者や職員にも還元する事ができる。

・稼働率は高いに越した事はない。

日々の利用者のケアや価値を生む為には、サービスが継続できる環境も大切です。

今回は介護の経営の関わる数字部分のお話でした。

どこかでお役に立てたら幸いです。

読んでいただきありがとうございました。

コメント

  1. […] […]

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