介護現場で起こる問題を何とかしようと考える際、ルールなどを決める事があると思いますが、肝心のルールが浸透せず、
「あの職員がやってくれない・・」
「あの職員が出来ないから無理だー」
「とりあえず言い続けるしかない・・」
などなっていませんか?
特定の職員への注意や指導する効果は、あくまで短期的な結果にしかなりにくいです。
そして指導者がいなくなったら崩壊します。
なので
長期的に改善を維持したい問題は、習慣化された仕組みを作る必要があります。
今回は、介護現場で実践できる問題解決の仕組みづくりについて説明していきます!
仕組みづくりを行うメリットとデメリット
短期的解決との違い
例えば転倒事故が起きたとして、その解決をする際
「転ばないよう〜〜をする」という心がけのようなルールだけでは短期的な解決手段です。解決に「〜する」という意識がある事で成り立っているので、忘れたり、やらなかったりする人に対して注意する人が必要になってしまいます。
一方で仕組みで問題を解決しようとするのは、
「転ばないように〜〜をして、〇〇の時期には□□をして、さらに△△に繋げて当たり前に出来るようにする」
などのように、始めは意識的に行動をするのですが、意識せずともやるのが当たり前の状態になるよう流動的に行動していく点で違いがあります。
介護施設で「食事や入浴の提供を今日はしない」なんて事はないですよね。仕組みとして当たり前にあるからそんなに意識もせず、動けるんじゃないでしょうか。
メリット
仕組みづくりのメリットは、
①職員全員ができる
②当たり前に出来る
③続けられる
というところです。
特に③の『続けられる』というところは大きいです。
例えば、利用者の事故が発生したとして、再発防止の為に続けていた取り組みがあったとしたら、同じような事故の発生は防げる可能性が高まります。
また、利用者さんのケアで良い取り組みをしていても、途中で辞めてしまったら、意欲が落ちてしまうかもしれませんが、もし取り組みを続けられる仕組みがあったら、利用者さんの意欲を落とさず過ごせる環境を維持できるかもしれません。
デメリット
仕組みづくりを行うデメリットは、
・時間がかかる可能性が高い
・はじめに職員へ説明が必要
というところです。
というのも、職員の入退職等や利用者の変動もある中で、何がマッチするかは試行錯誤しながら、「これだ!」というものが見つかるまでやってみて改善する必要があるからです。
意思決定が遅いと合ってない行動をずっと行うことにも繋がってしまうので、素早く意思決定が出来るように判断する人はリーダーや少人数のプロジェクトチームの方が望ましいです。
改善までの仕組みづくりの流れ
問題を発見し、解決までの策や行動をイメージ出来たら、解決に向けての仕組み作りを考えていきましょう。
ケアサービスの質向上に上限はないと思いますが、高望みから行わず、現実的に行動できる事から始め、段階的に進めていきます。
流れとしては下記の順番です。
【仕組みづくりの流れ】
①環境準備
↓
②効率化
↓
③職員意欲向上
↓
④習慣化
↓
⑤質の進化
環境準備
解決する上で、まず行うのは環境づくりです。職員のマインドセットを考えようとするより、環境を変更することでやらざるを得なくなるので、結果早いです。
例えば余計な椅子があれば座ってしまい、お喋り空間を作ってしまう事にも繋がりますが、なければ座らず次の行動への動きが早くなったりします。しかし嫌がる職員には「なぜ変更したのか。変更する事でどんなメリットが得られるのか」を説明をしていく必要があります。説明を飛ばすとその後で協力が得られずアンチが増え行き詰まります。
例 動線の変更。用具等の置き場変更。用具等の破棄や作成、導入など。
効率化
環境が一旦出来たら、より効率的に運用するにはどうしたらいいかを考えます。なぜなら準備してみたけど、「他の取り組みが出来なくなった。時間的に無駄が大きい。やりづらくて正直やりたくない」など発生もするからです。
仕組みを作って、『やる』のは職員なので現実的にできる事をやりましょう。
コストとなる回数、時間、労力などの短縮化。やれる人を増やす。
例 やり方の手順書の作成・共有。適した人に役割を振るなど。
職員意欲の向上
ルールの延長線上でなんとなくやっていたりでも、まず職員が改善する為の動きをやり始める事が大切なので最初はそれでOKとします。
そして次第に職員の大半が行えるように参加機会を促していきます。職員が意欲的に改善行動を行える状態、つまり当事者意識を持った人を増やすのがこの段階の目標です。
職員が意見を発するようになったときは能動的になった瞬間なので、協力を得られるチャンスです。見逃さず意見交換をしましょう。
例 改善する為の行動に参加してくれた職員を賞賛する。その意見を聞き、反映する。
習慣化
当事者意識を持ってる職員が増えると、改善をする意味などは理解してくれている状態になっていると思います。やるべき事も当たり前の意識になっているでしょう。
それを長く続けられるよう調整をしていきます。
例 人手不足や多忙な日等でもやらないではなく、最低ラインの基準を決めておく。専門的な担当を作り、評価やリーダー的な役割をしてもらう。
質の進化
問題が改善し、その状態が維持出来る状態になっていれば、とりあえず解決は出来ているといえます。しかし、取り組みによっては、職員のモチベーションも高くなっている場合もあるのでさらなる質向上を考えていくのも良いです。
課題解決と職員のモチベーションが上手くリンクすると、介護サービスはどんどん良くなっていきます。
そして、課題や弱みだった事項がいつのまにか事業所の売りや強みになるまで変わることもあります。
実践例
【問題例】残存機能維持の為にレクリエーションの実施を計画書に記載しているが、利用者さんへのレクやアクティビティが実施出来ないときがある。
こんな問題があった場合の解決する仕組みのプロセスの例をご紹介します。
①環境準備
→どの職員も出来そうなレクツールを準備してみる。例 日本観光地を写真にしたクイズファイルなどを作成
②効率化
→レクをやれる時間や体制の調整を行う。職員からやり方やコツを共有。運用が上手な職員からどんなポイントに注意してやっているのか確認し、情報を抽出しやすい工夫をする。
③職員意欲の向上
→得意な職員にはリーダー的役割、苦手な職員には部分的役割による参加で機会を作っていく。また、日々の日課スケジュールでレクを組み込むが、朝礼や会議などで、いつ何をするのかの意見を聞き、改善案含め反映させていく。
④習慣化
→他の業務が押してしまった場合に予定のレク以外のレクも出来るようにする。最低でも何分は行う、時間の入れ替えで実施するなど、職員がレクをやるということは曲げずに取り組む。やる事が当たり前になってきたら、優先順位の基準を柔軟にしていく。
⑤質の進化
→レクの専門性を上げる為に、専門的な勉強会を開いてみる 例 認知症予防とアクティビティについて
→ 例 認知症の中核症状である見当識障害の予防で回想やリアリティオリエンテーションを取り入れたレクリエーションを行ってみる。例えば、町会や近所のスーパーなど生活に関わった場所の写真のクイズを用意し、どのあたりにあるのか?どんな時期に誰と行った事あるのか?などを話題にしてみる。
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レクが職員みんな出来るようになるだけでなく、専門的な要素を取り入れて活動提供できるようになる。興味を持ったり、相談しあう機会がさらに増えれば、職員自身もレクを通して勉強する意味を感じて自己学習する人も出てくる。
まとめ
・言うだけの短期的解決より、仕組み化し長期的な解決をしよう
・時間と手間はかかるが、仕組みが出来たら当たり前に続けられる
・仕組みづくりの過程で職員のモチベーションに繋がったら、どんどんサービスは良くなる
シンプルにリーダーが「〜してください」でその場での解決はする事があっても、その後の職員状況の変化や時間の経過などでやらなくなってしまうので、仕組み化するつもりで改善に取り組む方がいいです。
仕組み化してしまえば、誰かの指示というより、皆んなで協力して構築している状態になるからです。
今回は以上です。
読んでいただきありがとうございました。
どこかでお役に立てたら幸いです。
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