介護現場で利用者さんへの言葉遣いは関係性?マナー?【言葉を発した先に何があるか】

介護職の現場改善

今回は介護現場の接遇研修のテーマでもよく挙がる、

介護職は敬語を使うべきか、使わなくていいか

について深堀りして考えていきます。

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利用者さんに敬語で話すのはマナーなのか?

敬語を使うべき!

は接遇の基本として、まずは教わると思います。

 

なぜか?

利用者への敬語を使うべきと考えている人は、

・介護もビジネスなのだから、ビジネスマナーとして当たり前

・大先輩である高齢者、さらに利用者でもあるから

・敬語が出来ていないと、指導不足と思われる

・家族の立場から考えると、親がタメ口で扱われているのは不快に思うはず

・敬語で話をされるのが、礼儀として当然と考えている利用者もいる

と考えがあったりします。

これらは、どれも間違いなくあります。

 

確かに実際、敬語を使わないとサービスを受け入れてくれない人もいますし、

本人や周囲の人まで不快にさせてしまうこともあります。

敬語を使わないだけで、

「アレ?こいつナメてるのかな?」

「アレ?もしかして、私ナメられる?」

と相手に思わせてしまうのは、大変もったいないと思います。

 

また、サービスとしての人と関わることが重要な以上、

サービスの質の基準を高める上でも、

「最低限、敬語を使って不快にさせない丁寧な表現を使える」

のは大事なことです。

さらに組織的に運用することを考えると、

「敬語を使う」という統一感はあった方が全体最適として基準値を守れる

ことにも繋がります。

利用者さんへのタメ口は関係性が出来ていれば許される?

一方で、敬語は重要なことは間違いないですが、

その利用者と関係性がしっかり構築出来ていれば、タメ口やくだけた表現は許される

という意見もあります。

 

その理由は、

・相手に認知機能の低下があり、言葉を簡略化させた方が伝わりやすい

・敬語じゃない方が温かみを感じさせられる場合もある

・敬語ばかりでは、よそよそしく感じさせてしまう

・身内と誤認している人に対して、敬語を使うとかえって不安にさせてしまう

・信頼している人からは、多少くだけた表現を使ってもらった方が嬉しい

こんなケースがあることからです。

 

確かに、関係性次第で一部緩和された方が、

コミュニケーションが円滑にまわったり、

あるいは介護サービスごとの本来の目的(自立支援や残存機能、維持向上など)が、

達成しやすくなる場合も実際あります。

 

必ずしもくだけた表現を使うことが絶対ではないですが、見過ごすことができないくらい、

「信頼関係性のある職員の一言なら動く!」

という利用者は多いです。

 

もちろん敬語を使っていても、関係性は良くすることは出来ますが、

トークのテンポの問題があるかもしれません。

冗談を言い合ったりする時に、敬語や丁寧な表現ばかりだと面白みが半減したりすることもある気がします。

 

また、

・話す相手が異性や世代が大きく違うか

・利用者本人が生活歴として敬語を使うタイプだったか

という点も要素として関係していると思います。

男性なら女性のおばちゃんからタメ口で話されても、「別に気にしない。むしろ、その方が安心する」という人もいたり、

元々、海外暮らしが長い人や商売や近所付き合いなど敬語は元々使わないし、使わなくても気にしないという人もいます。

 

こうした点からも、

厳しく敬語にこだわるよりも、

関係性が出来ていれば多少は言葉が砕けていても許される

ことは考えられるでしょう。

状況に合わせて言葉の使い方を変化させる

じゃ、「結局敬語使うの?使わないの?」を考えると、

 

結論としては、

しっかり敬語が使えることも、

関係性で言葉の表現を崩せること

どっちも大事です。

 

重要なのは、それを適材適所で判断して、使いこなせるかです。

 

しかし、言うは易しで、

これを教えることを考えると、なかなか難しいです。

 

敬語を使うということは、国語の試験でも出てくるみたいにマニュアル的に教えやすいですが、

関係性に応じた言語表現の方は、

各人のアイデンティティや間柄で変化するものなので、〇〇なときはコレ、△△なときはアレと状況に応じた表現を決めるのは難しいんです。

 

プライベートの遊びで仲良くなった人でも、敬語のままの人もいれば、タメ口で仲良く関係性を維持出来る場合もありますよね?

なので、関係性に応じて言葉遣いを変化させるには、

実際に人間関係で色々経験してきて、人間力を磨いている必要があります。

そしてこれは、微妙に変わる人間関係の変化の中で、どの言葉表現を使うかを自分で選べるセンスの習得が必要なので時間がかかります。

使っていなきゃ身につかないものだから。

学生時代で身につけた人もいれば、年をとっても身についていない人もいます。

 

そういった事情もあり、

ビジネスの場の接遇研修などでは、教えやすく、とりあえずマイナスな印象を与えることはまずないであろう敬語を使うことを勧めるんです。

タメ口や崩れた言語表現はタイミングを間違えると、大失敗する恐れがあるからです。

 

けど、そこで思考停止するのは対人プロの専門職としてはどうなのか?

もう少し考えておくポイントもある気がします。

売りや目的の視点も敬語表現に関係する

マナーや関係性以外にも、

僕自身が思う、もう一点考えておかなければいけないポイントが挙げさせていただきます。

 

それは、その事業所や法人、サービス形態が出している

「売りや目的」

です。

 

ひと口に介護の仕事といっても、

各事業所によってコンセプトや来る利用者さんのタイプも違います。

 

大きな施設や小さな施設。

アットホームな民家型施設やフォーマルなセンター的な施設。

など好みや相性でも変わる

 

世の中の他の仕事でも考えられることで

たとえば

赤提灯系居酒屋とお洒落な高級バー・・・お酒を飲むベースは一緒

駄菓子屋と百貨店の食品売り場・・・食べ物の販売のベースは一緒

学校と大手企業の会社オフィス・・・相談や教育指導のベースは一緒

これらはサービスを売る側がそれぞれ、前者がタメ口が許される方後者が許されないことがあるものです。

スナックのママがお客にタメ口で接してきて、不快になる人はそもそも向いてないし、

学校の先生が生徒に「山田!2番の問題答えてみろ!」などとタメ口で言って、問題にする人は基本いません。

 

各経済活動や事業によって、

「売りや目的」

は必ずあります。

あるから成り立ってるわけです。

 

違いは、お互いの関係や雰囲気にカベを作るかどうか。

売りや目的によって、

・カベを作った方が価値を高く出せる場合

・カベを作らない方が価値を大きく出せる場合

もあるからです。

 

で、

介護サービスも人間の社会システムから成る経済活動の一つです。

であれば、いずれにせよ価値が大きくなった方がいい。

そして、どこを「売りと目的」にしているか、来る利用者さんのタイプが変わります。

そしてタイプに合わせて対応することで、価値を大きくすることにも繋がります。

 

極端な話ですが、

民家型のアットホームな施設を選ぶような人であれば、多少言葉の表現が崩れるくらいの方が気持ちいいと感じる可能性が高いかもしれないし、

高額な入居料を払って設備が充実した有料ホームで過ごしたい人は、スタッフにも相応のマナーを求めるかもしれない

 

「事業所の売り」は、富裕層や下町、過疎地、都会など地域状況も取り入れる場合がほとんどなので地域性などでも変わります。(敬語表現の存在自体も地域性は関係しているようです。関連サイト「日本に敬語を使わない地域があるって本当ですか」より)

 

僕自身、下町感溢れる地域と富裕層の多い地域、民家型と施設型とそれぞれのケースで介護経験があります。

もちろん利用者さんや家族の考え方はそれぞれ全然違いますが、許される関わり方と許されない関わり方の線引きは「売りや目的」で偏る印象はありました。

 

介護施設ごとに売りは必ずあるので、

どっちにバランスを置くのかが大事になってきます。

その事業所の売りによって重きの置き方が変わって来るからです。

敬語を使わない職員について注意する前に

言うまでもなく、

敬語を使えるようになるのは必要です。

けど、介護現場では

敬語は使えるのに、使わない職員がいる

と思います。

使えないんじゃなく、職員自身の判断で使わないことを選んでいるケースです。

 

そうした時に人によっては、

「あの人(敬語を使わない人)は、ダメだ!」

と判断してしまう人がいますが、

 

・組織の方針なのか

敬語を使わないことで起きてる事象は何か(良い点、悪い点)

敬語を使うことで起きる事象は何か(良い点、悪い点)

は考えておくべきです。

 

たとえば

くだけた表現を使っているから、職員が生き生きして場が明るくなるなど、

意識しないと見えない効果はないでしょうか?

 

あくまでも、

「人間性としてクソだ」

「他のところでは使えない」

など注意の際に言ってしまうのは、ちょっと考えが不足しているかもしれません。

敬語表現を使わない選択は、単にたまたまそのチームの求めるやり方には合わなかっただけというのがほとんどだからです。

 

注意として伝える際は、

敬語を使う意味を整理して伝えた方がいいですね。

なんだかんだ許されてしまう人になるには?

ここまでをまとめると、

マナーとして敬語を使い続けることは、マイナスはないが、深くアウトリーチ出来ない層が出てくる。

関係性重視で言語表現を崩すのは、当たればかなり親密になれる可能性があるが、外れたり周囲の見せ方に失敗すると、相手を不快にさせてしまう。

そこに場や雰囲気としてのアリかナシかの売りや目的の要素が入ってくるイメージ

 

けど最終的に決めるのは、

利用者(相手)

です。

体調の変化でイライラしたり、認識できない場合だってある。

昨日はNGでも、今日はOKがある。

そこに合わせていくのが、

プロとしての専門的な関わり方じゃないでしょうか。

 

そして、プロとして抑えておいたほうがいいのは、

言葉表現がたとえ失敗しても許されるようになること

もあることです。

 

では、どうしたら多少のミスが許される人になるか?

わかりやすいのが、

「利用者さんと何度も関わること」

です。

心理学でいう単純接触効果(繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。Wikipediaより引用。)です。

 

ケアでのポイントは、

やかましく声かけするんじゃなく、相手のストーリーに関わる登場人物として何度も出てくる人になるイメージです。

困った時に手を差し伸べたり、さっと片付けてくれたりなども含めて。

 

普段のケアでやっている人も多いかもですが、

めっちゃ大事です。

終わりに

敬語って表現は、相手がいるから成り立つんですよね。

自分ひとりだけで済む世界なのであれば全く必要ないです。

 

本来、敬語の使用は相手を敬うおもてなしに近い要素が含まれているはずなんですが、

強制力や排他の考えも出てきて、

使ってないとダメ扱いされやすい部分もあるのが実情です。 

 

しかし他の外国語でも敬語はありますが、軍隊などでない限り、

ここまで厳しくはなりません。

 

個人的な意見ですが、

使う使わないで、一喜一憂したり、排他したりするのは、なんか違うんじゃないか。

もっと本質に向き合うべきなんじゃないか。

と考え、各論点に触れつつ本記事を書きました。

 

今回は以上となります。

読んでいただきありがとうございました。

 

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