介護は理屈だけじゃない?ケアに生かすラテラル・シンキング

介護職の現場改善

これまでの僕の記事では、

ケアの現場作りでもいかに論理的に考えることがケアの現場作りでも重要か

を多く伝えてきました。

 

なぜなら

リーダーになってマネジメントしたり、良いケアをしていくためのアイデアを実現するには、論理性がどうしたって求められるからです。

 カリスマリーダーでもない限り、チームは感覚じゃまとまらないし、各関係者への説明や書類作成の場面も多いので。

 

とはいえ、

人と人とのコミュニケーションを軸に働くことの多い介護現場では、

理屈だけでは上手くいかないことも多々あります。

感情や感覚で動いたほうが上手く回ることだってある。

 

「理屈ばっかこねててもしょうがないよ〜」

なんておっしゃられる方の意見もあながち的はずれでもなかったりするんです。

介護は家族や人生、病気など人間ドラマのど真ん中に入っていく仕事なので、

マニュアルなんか通用せず人間力で勝負しなきゃいけないときだってあるんですよね。

 

そこで、お伝えしたいのが、

ラテラルシンキング(水平思考)という考え方です。

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ラテラルシンキングってなに?

1967年頃、マルタ島出身のエドワード•デ•ボノ博士によって提唱された思考法です。

別名、水平思考と呼ばれています。

「どんな前提条件にも支配されない思考法」として注目され、

マーケティングの神様と呼ばれるコトラーからも水平思考で考えていくことの重要さについて取り上げられました。

 

たとえば

りんご13個を均等に3人で分けようとすることを考えてみましょう。

普通に3等分することを考えたら、4個と0.3個分ですが、割り切れないですし、味や匂い、色、品種などもしかしたら違いによる不均等が生まれるかもしれません。

13個の中で高級品種もあれば、そうじゃない品種も混ざっていたら価値の不均衡も発生しますよね。

 

じゃ、そんなときどうするか?考えると、

「全部混ぜてジュースにしてしまえばいい」

というのを答えの一つと考えると、均等に配れることに繋がるのではないでしょうか。

これが、ラテラル・シンキングの考え方です。

 

果物をそのままの状態で切って、配布することの固定観念を捨てて、

別の全く違う方法を正解として採用してみるのがラテラル・シンキングの思考法です。

ロジカルとラテラルの二刀流でいこう

もう少し意味を分かりやすくする為、ロジカルとの関係に結びつけながら説明していきます。

 

ロジカルに考えていくことは、論理的思考(あるいは垂直思考)と呼ばれますが、

ラテラル(水平思考)に考えることは、対比関係にあるわけではありません。

違いは、

ロジカル•••考えの深掘り。常識や経験、これまでの知識などから正解へ段階的に思考していく方法。

「〜であるべき」と答えを出す。

 

 

ラテラル•••考えの幅拡大。解決に繋がるであろう材料は全て正解の一つとして採用する思考方法。

「〜でもありだね」を答えとする。

という点があります。

 

どちら片方を採用すれば良いわけではなく、

ロジカルには、窮屈で変化に対応できないが、確証の高い正解を導きやすい面、

ラテラルには、現実性があるか不明瞭だが、臨機応変な対応が求められる場面で必要な正解が導きやすい面、

があります。

 

会社や学校などグループワークや会議などでブレインストーミングをする場面があると思いますが、

正にロジカル(垂直思考)とラテラル(水平思考)の組み合わせを活用するところです。

【ブレインストーミングの流れ】

①ラテラル•シンキングでアイデアをたくさん出し、思考の幅を広げる

②ロジカル•シンキングで出したアイデアを、現実性やコスト、カテゴライズなどのフィルターでくくり、実行する正解を絞り出す

 

実際の問題解決やアイデアを形にする場面でも、

このような思考手順が現実的ですよね。

最終的に採用できるのは、コスパ良く効果的な手が打てる一手だったりもするわけですから。

そういうわけで、ロジカルとラテラルの2刀流を使いこなせるようになると強いです。

ラテラル•シンキングを身につけるには?

「考えよう!」

とすると、ロジカルについ考えてしまうのは現代人の習性としてよくあるそうです。

「じゃ、考えないで感覚でアイデアを出すのか」

というと、それも少し的がズレています。

 

ラテラル•シンキングを使えるようになるには、


①固定観念を捨てる

②抽象化して本質を読める段落

③キーとなるポイントを見逃さないで気づける

これらの力が重要になってきます。

 

これらの力をふまえ、思考の幅を広げることがポイントです。

 

介護現場での例で考えてみましょう。

家で夜間徘徊のある認知症のおじいちゃんが自分が働いている施設を利用することになった。

家族からは昼間寝ているから、寝ないというお話があった。

施設を利用してもらうにあたり、夜間寝られるような対応策を考えたい。

この例をラテラル•シンキング(水平思考)で考えてみます。

①まず、昼間寝ていることが寝ないことに繋がっているという固定観念を捨てる。(これが確かであれば、寝かさないで起きてもらうことが正解かの確証を早めに実証してみる)

②寝ないで困るのはなぜか?寝て欲しい本質はどこなのか?どうしてそのような状態になっているのか?

そもそもの本質的なポイントを考える。(生活リズムが狂う、日中傾眠がちだと入浴や食事の際危険、職員の少ない夜勤帯は対応が厳しい、夜間暗くて不安など•••)

③実際に効果がありそうなアイデアをたくさん出してみる。

•数日間は日中活動等参加してもらい、なんとしてでも起きてリズムを正してもらう

•暗いのが怖いのであれば、夜間の照明を寝るまで明るめに点けておく

•夜の食事をしっかり摂取してもらい、血糖値が下がり眠くなるのを狙ってベッドまで誘導

•排泄環境や就寝環境に不安がないよう準備

•認知症による物取られ妄想などで不安になっているのであれば、ボードや書面で説明書を作っておいたり、気が済むまで一緒に探してみることで安心してもらう

•シフト体制を調整し、寄り添ったり、環境準備など就寝までに対応できる時間を作る

など

 

アイデアをたくさん出し、やってみることで、どれがキーのポイントになるか気づけるようになります。

 

介護現場で熟練されている方は、認知症の方への対応でアイデアがたくさん出てくるような人も多いですが、

経験の中で思考の幅が広がってきたからだと思います。

 

とはいえ、

経験のある方でもあまりにその施設やサービスのやり方に慣れてしまうと、固定観念も出てくるので①や②の思考も非常に重要です。

たくさんアイデアを出すと良いですが、

あえて20個や30個など数値目標を立てると、制約と自由さのある中で埋めなきゃ気が済まない脳の働きもするので、アイデアが出やすくなることもあるのでオススメです。

ぜひ、やってみて下さい。

足るを知るVSもったいない

「実際にたくさんアイデアを出した!」

「けど、意味のないアイデアもあるんじゃないか?」

そんな気持ちも出てくるかなとは思います。

 

足るを知るという言葉があるように、時間がない中でアイデアを絞り、

明らかに効果のありそうなことだけ集めてシンプルにそれだけやるというのも確かに大事なことです。

とはいえ、一見無駄そう、嘘でしょという採用基準から外していたアイデアが実は効果があることもあります。

 

上記の中々寝ないおじいちゃんの例で、色々それっぽい対策は考えたものの、

実は最も有効なアイデアは、

お気にいりの女性職員とちょっとお話しし、「お休み」と言われたら、それで満足して爆睡した

なんてこともあったりします。

あとから考えると、個々の人間関係や本人の承認欲求の問題だったなど色々理屈をつけることができますが、

突拍子なさそうなアイデアが実はキーポイントだということに気づけないと、そもそも解決の一筋が見つからなかったりもするから注意です。

 

せっかく考えついたアイデアなんだから、

「もったいない」と無駄と思えるアイデアを残すことで、選択肢に迷いを生じさせるリスクはありますが、

考えることに関しては思わぬ正解を発見もすることもあるのはポイントですね。

終わりに

ロジカル•シンキング(垂直思考)とラテラル•シンキング(水平思考)を上手組み合わせられるようなことで、

•長期的な仕組み作り

•分野横断的に臨機応変な対応が必要な状況

どちらでも対応できるようになっていきます。

 

また、AIはロジカルに判断するのが性質上得意とされています。

であれば、人間が今後得意になるべきは、分野を横断してアイデアを引っ張ってきたり、柔軟に思考できるようなことがより求められるんじゃないでしょうか。

 

インターネットの情報も論理を基準とした正解が溢れていますが、実際に自分の目の前の問題は水平思考で考え、まさかのところから材料を引っ張ってくる方が早い場合もあります。

なんだか窮屈な論理の世界を広げてくれるきっかけにもなると思います。

 

今回はそんなラテラル•シンキングについてのお話でした。

記事は以上となります。

どこかでお役に立てたら幸いです。

読んでいただきありがとうございました。

 

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