認知症などで外出拒否のある方をデイに連れ出す作戦について

介護職の現場改善

引きこもりがちの高齢者によくあるケース。

認知症が進んできて、

・家にこもって寝てばかり

・トイレの失敗が多々ある

・入浴や着替えを家でやろうとしない

・家族の言うことを聞いてくれない

こんな人がいたりしますよね。

 

そんな時にデイサービスなどを利用して、

入浴しての清潔保持、社会交流、食事の機会を持って生活状況の改善をすることが出来たりします。

また、家族にとっても介護負担軽減や相談できるところが出来るのはサービスを使うメリットがあります。

にもかかわらず、

本人は頑なに「外には出たくない!」と言う。

 

こんな時どうすればいいか?

こうしたお年寄りと関わってきたデイサービスでの幾度の経験から

「どうやったら外にお連れできるか」のノウハウを解説していきます。

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そもそも、なぜ外に出る必要があるのか?

外に出ないと機能が衰える

家で引きこもっていると、心身機能の悪化の恐れがあります。

自宅で何かしら色々と活動していればまだ良いのですが、

引きこもり系高齢者に多いのは、

テレビを見て、あとは寝るばかりというパターン。

これはヤバイです。

 

生活の中での動作がほとんどなく、頭もほとんど使う要素がない状態。

人間の機能は使わなければ、どんどん衰えます。

 

こうなると、

・認知症の進行

・廃用性症候群

・便秘気味

・食欲不振

・筋力の低下

こうやって段々と

一人で生活がままならなくなり、介護が必要な状態になっていきます。

 

外出することは、気持ちや環境の準備も含めて、

1日の生活の中での活動時間が増やすことが出来るのでメリットは大きいんですよね。

引きこもりによる昼夜逆転

機能の衰えと同時並行気味かもしれませんが、

引きこもりによって生活リズムが狂ってしまう方もいます。

 

認知症の進行が原因にある場合もありますが、

昼間寝てばかりで、夜眠れず、その繰り返しの状態。

在宅介護で「次の日仕事だから寝てくれー」と娘や息子が言っても、寝てくれない。

医者に相談して、睡眠導入剤をもらったがふらつきながら、起きてしまう人もいる。

 

このような方も外出機会を入れ、日中の活動時間を増やし、

昼は起きて、夜眠るリズムになれば改善するケースもあります。

ただ、慢性的な夜更かし傾向だとすぐには改善しないので、少しづつ改善を待つ必要はあります。

入浴の機会が持てない

「本人が入浴を拒否する」

「家族で対応するには入浴介助が厳しい」

そんな場合は、デイサービスなどを利用し入浴をお願いする必要があります。

 

入浴が出来ると

・皮膚の悪化の予防や改善

・匂いが改善されるので、他者へ不快感を与えることがなくなる

・副交感神経が刺激され、気分転換になり、気持ちが落ち着いたり明るくなる

・保温や水圧で血流が良くなる

こんな効果が期待できます。

話す人が少ないため、社会性が失われる

サービスを使ったり、外出する機会を持つ意味として、

社会との繋がりの確保も大事なポイントです。

高齢で引きこもると、家族との会話のみだったり、

独居だとさらに人と話す機会が少なくなりがちです。

 

一人でも仕事や趣味など何かあれば良いのですが、

特にやることがない状態で暇を持て余すと、

老いへの絶望感と並行して、自分の内の中で悩んでしまったりします。

鬱状態や自信喪失したまま慢性化してしまう方も実際少なくないです。

 

他者との繋がりを持ちやすい環境に出てみる意味は、正にそこにあります。

 

僕がデイサービスで出会った利用者さんの中で、

最初は「行きたくない」と言っていた鬱気味の方が、

・同じような悩みを誰かに打ち明け、共感を得る

・余計なことは考えず、活動的に過ごして1日を終える

・困った時に助けを求められる誰かを持てる安心感

こんな効果があることを実感してから、前向きに過ごせるようになったケースもありました。

結局その方は、一ヶ月に数回の利用から週5回ほどの利用になりました。

家族が外に出て欲しいと思っている

家族が介護負担の軽減のためにも、デイサービスは必要とされています。

認知症の症状の悪化などから、暴言や暴力、あるいは危険行為があり目が離せない状況があったりすると、

介護中のご家族の方は、

・自分の時間が持てない

・仕事が出来ずに稼げない

・先の見えない介護が嫌になる

という風になってしまいます。

 

たとえ「もう無理だからすぐ施設に!」と介護者が考えていても、

施設の入所基準は年々厳しくなってきてますし、地域によっては空きが出て入れるようになるまで時間がかかります。

いずれにせよ在宅での介護は必要になってくるので、

その間にデイサービスやヘルパーなどを入れて家族の介護負担軽減はしていくのは、

お互いの関係や生活を壊さないためにも重要なところになっていきます。

本人が行きたくない理由

本人が外出を拒むのには何らかの理由があります。

気持ちを上手く表現出来ない方もいるので、その点を介護者側が気づいて対応してあげないと事態の改善に進まないケースもあります。

 

どんな行きたくない理由があるのか考えてみましょう。

いくつか例を挙げていきます。

家にいたい

出たくない理由の1つとして、

素直に「ただ家にいたい」というケース。

 

なぜか?

・知らないところに連れていかれるのが不安

・マイペースに過ごしたい

・やらなきゃいけないことが出てくるのは面倒くさい

だったりします。

 

面倒くささと不安が入り混じった気持ち。

僕らでもそういうときありますよね。

 

そんな方が良く言う言葉の第一位は、

「家でやることがあるんで・・・。今日はやめときます。」

先延ばしの心理が出てきます。

 

夏休みの宿題を後回しにしたい気持ちにも近いかもしれません。

知らない人と話すのが苦手

身内やかつての友人など知り合いがいれば、多少は安心があるかもしれませんが、

デイや施設では基本的に職員含めて初対面の人とのコミュニケーションから始まります。

それがイヤという人もいます。

 

たとえば

・緊張がイヤ

・身なりの準備が大変だし、準備しないと人に会えない

・自分の衰えが他人に見られるのが恥ずかしい

です。

そこに対しての介護職が行うアプローチは、どうやって知り合いの人になるかがポイントになります。

出来るだけ、本人が見る世界の中でよく登場するキャラクターになっていくのはキーです。

デイや介護サービスに悪いイメージがある

プライドが高い方や世間体をとにかく気にされる方は、自分が介護サービスを使うようになってしまったと思われることもあります。

また、テレビや新聞で悪質だったり、幼稚な印象を持っていたりすると、

ひどく落ち込んでしまうことも。

 

たとえば

・お遊戯会のような幼稚なイメージ

・やりたくもないイヤなことを強制する

・嫌いな利用者、職員がいる

・環境が合わない(密度、人数、認知機能のレベル、車椅子使用者の数など)

など、

こちらから見ると大したことないような理由に思えても、本人にとって重要だったりすることもあります。

誤解しないでイメージを持ってもらうことや、

本人の趣向を理解した上でいくつか検討して合う環境を探すことが必要です。

体調がマジで悪い

シンプルに体調が優れない場合もあります。

誰だって具合が悪い時は休みたいですよね。

 

どうしても具合が悪い場合は、休んでもらったり、

受診してお墨付きを得てからサービスの利用を検討する方がいいです。

 

けど、家族からすると

どうしても行ってもらわないといけない場合もあると思います。

 

たとえば

・家族が仕事や用事でどうしても出かけなくてはいけない

・本人が家で一人だとリスクがある

・体調不良が廃用症候群や生活習慣の崩れによるものである

ケースなどです。

 

熱発や感染症の恐れやある場合は、サービス側から受診を勧められ受け入れ拒否されることもありますが、そこまでではなければ、デイでも時折静養しつつ過ごすことは一応できます。

一人で長時間誰もいない状況よりは、誰かがいて、食事や排泄のフォローが入る環境の方が良い場合もあります。

介護する側が持っておくべきスタンス

家族や介護職が引きこもりがちな方と関わる上で、持っておいたほうがいいスタンスは何かあるでしょうか?

初回から全部上手くいくことを狙わない

ずっと引きこもっていた人に関わって、何かしてもらおうとするのは、新しく生活の中に変化を出していくことになるので、すぐに順応するのは難しいです。

本人の気持ちと身体の両面で少しづつ慣れてもらうプロセスが必要です。

 

始めから全部上手くやろうとしても、本人の拒否反応や意欲が続かなかったり、

体調にも悪影響が出てしまうこともあります。

 

ポイントをいくつか挙げると、

・本人にとって受け入れるハードルが低いところから始める

・本人の長年の生活スタイルに出来るだけ合わせる。

・拒否が強くても長い目で見る。その代わりになぜ拒否があったのか分析する。

・ダメだと思ったら無理に連れて行こうとせず、一旦引く。外との関わりを継続するのを優先する。

無理に誘うと、悪いイメージだけが残ってしまうので、

次に誘うときにNGになってしまうことにも繋がります。

 

短期ですぐには上手くいかなくても、プチ成功で前に進んでいることを確認しつつ、中長期的での問題が解決できることを目指した方がいいです。

柔軟な対応も視野に入れる

デイサービスなどを利用する場合は、午前中のバタバタした時間に送迎してもらうことが多いと思いますが、本人が拒否したりしている場合は準備も遅れたりしがちです。

また、通所しても帰宅願望が強く出てしまう場合もあります。

 

そういった方へは、自然と柔軟な対応も求められてきます。

・短時間の利用

・送迎時間の調整

・訪問介護に準備やデイへの送り出しを依頼

・家族や友人などの同伴

・朝食や服薬、着替えをデイ到着後に対応してもらう

など

ただし、自治体ごとの法令や法人のルールなどで出来る範囲が限られる場合があるので、あらかじめ関係者で相談しておくと良いです。

 

ちなみに色々柔軟に対応してもらいやすいのは?

規模が小さい小規模デイ、宅老所。あるいは保険外サービスで対応可能なことを明示しているようなところは柔軟に対応してもらいやすいです。

効果的な声かけをするには?

タイミングと環境準備

声をかける前に本人がすぐ出れる体制を整えておくことは大事なポイントです。

そして良いタイミングで声をかけるとあっさり送迎車に乗ってくれたりもします。

家族、サービス関係者のお互いの協力が必要な場面でもあります。

 

声かけに応じてもらいやすい前段階で、

・荷物は最低限にし、前持って準備しておく。

・身支度が完了したくらいに丁度良く送迎車が来るのが理想。ヘルパーがいると調整しやすい。

・心理的に、人は身体が動いているときの方が気持ちも動きやすい。座っているよりも、立っている時に誘ってみる。座っていたら、まず立ってもらう声かけから始める。

こうしたポイントを抑えておくと、上手くいきやすいです。

納得するイメージを持ってもらう

声かけする上での一番のポイントは、

説得より納得

です。

 

場合によっては説得が成功することもありますが、

そのようなケースはご本人に認知症などの疾患がなく、本人が家族の負担や状況をふまえて理解できるような方でないと厳しいです。

 

基本は、本人の意思で納得してもらうことが一番望ましいです。

そして納得してもらうには、外に出る不安と面倒臭さをある程度解消する必要があります。

その点に注意しながら声かけをしてみましょう。

これからいく場所の説明をする

・どこにあるのか(施設の場所)

・どんな場所なのか(雰囲気や名称)

・何をするところなのか(目的)

・いつ帰れるのか(時間)

など本人にとっては気になるところ。

 

とはいえ、入浴嫌いの人に入浴目的だと言って誘うのは注意が必要です。

認知症などで感情の抑制が出来ない方もいるからです。

 

なので本人にとってNGワード(例えば入浴など)があるならば、一旦伏せるのも僕は大事だと考えています。あくまで本人と家族の問題の解決をするという主目的があるからです。

ある種、別のキーワードで声かけをしてみたり。

もし声かけの内容が本当の答えじゃなくても(実際は嘘だったとしても)、

丁寧に答えることで本人にとっての安心に繋がったりもします。

 

言葉での理解が難しければ、

写真やパンフレット、ホームページ、あるいはジェスチャーなどで具体的なイメージをもって理解してもらう方法もあります。

知らない人がいる不安の軽減、馴染めるか

始めていく場所であれば誰だって不安はあるものです。

物忘れがひどくなっている方ならば、それが毎回にもなったりします。

 

とはいえ物忘れのひどい認知症などの方であっても、全部忘れるような人は少なく、

ほとんどの方が雰囲気やなんとなく前に会ったことがある感覚などは持っていたりします。

なので何度も会ったり、徐々にコミュニケーションが親密になることで、

不安感を軽減することは可能です。

介護職員やデイサービスなどに対して、ぼんやりと良い雰囲気やイメージを持ってもらえるだけでも十分です。

 

始めて行くデイなどへの不安感を減らす作戦としては、

・初回どうしても厳しい場合は少しの時間だけでも家族が付き添ってみる

・担当者会議や送迎の声かけで顔見知りの職員がコミュニケーションの導入を行う

・サービス開始後は、挨拶や自己紹介の時間、本人がマイペースで過ごせる場の2点を用意する

など

デイや施設であれば、自分なりにマイペースに過ごせる場を用意しておくのもキーになったりします。

テレビが見える位置、本屋新聞が読める、椅子よりソファーで過ごせるなど、その方が過ごしやすい場はどこか配慮するのもポイントです。

できれば職員が勝手に決めるのではなく、本人に選んでもらえるようにすると自然と落ち着けるポジションは決まっていきます。

外に出るメリットを強調する

どんなことをするところなのかなどは説明すると思いますが、

行って何か良いことがあるのかを強調すると興味がでることもあります。

メリットをちゃんと伝えることで、

「じゃあ、行ってみようかな。」

となるケースも多々あります。

 

・入浴、運動、趣味、交流など目的の達成のため

・デイで仕事をしてくる(デイでの役割の全うする)

・好きな職員、好きな他利用者さんと会える

など

ケアプランで生活課題の改善の為、サービスを導入したりしますが、

本人にとっては暇つぶしや好きな職員と会うなど大それた理由じゃなくてもメリットになっていれば何でもいいです。

若くて綺麗な女性職員、男前な男性職員とちょっと話すために、動く気になる方もいたりしますが、全然それでもいいと思います。

 

デイに行く理由には十分なものになりますし、

実際に出発してデイで過ごせるだけでも、本人にとっても、介護している家族にとってもメリットがある状況になります。

まとめ

・本人の気持ちと身体の両面で少しづつ慣れてもらうプロセスが必要

・押し付けず、柔軟に対応する

・声かけに応じてもらいやすい環境を準備しておき、確率の高いタイミングで誘う

・説得より納得(不安や面倒臭さの軽減とメリットの強調)

デイや施設などに行ってもらわないと現状の問題解決は難しいのに、行くのを頑なに拒否される方と向き合うのは、時間がかかりますし、何度も試行が必要だったりもします。る

 

僕も家族やケアマネージャーと何度も打ち合わせしつつ、送迎の玄関先で何度も断られ、ようやく利用してもらえるようになった利用者さんがいました。

介護報酬の算定の兼ね合いもあるので、「そういった利用者さんでも、来てくれるまでずっと必ず受け続けよう」とはとても勧めるようには言えませんが、

粘った末に利用になり、結果として本人の生活環境改善や家族の仕事復帰などにも繋がった事実もあります。

 

どこかで線引きも必要かもしれませんが、

本記事がどうやって関わればいいかのいくつかの手段の参考になれば幸いです。

 

今回は以上となります。

読んでいただきありがとうございました。

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