テクノロジーの発達で変化する自立支援のあり方を現場感覚で考えてみた

文化と思考

どうも、介護福祉士のなおべい(@naobei)です!

 

今回はITと介護等の支援についての内容です。

人が行う自立支援とテクノロジーの発達で変化する支援のあり方について、

考察してみました。

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今までの自立支援

介護の基本理念の一つに、自立支援というものがあります。

細かい定義は無視してざっくりいうと、

介護における自立支援は、


・残存機能を生かす

・できることは自分で行う

そして、自立支援の先には経験によって得られる自己承認や社会参加があります。

要介護状態の程度が重くなるのを防いだり、改善するという意味でも自立支援は大事なアプローチになります。

 

とはいえ、人間年を取れば段々と機能は衰え、

できること、できないことはやっぱり出てきます。

出来ることやってみよう、としてもいずれ出来なくなる限界は出てくるんですよね。

しかも、タイミングや程度や感じ方は人それぞれ違う。

 

僕自身、介護や障がいの現場にいて、

「やれるところはやってみましょうよ!」

とよく声かけする方なので、あまり認めたくはないですが、

 

とはいえ

老いや障害、病気によって、

本人自身で頑張れるライン、諦めずにやれるラインがあるのは間違いないです。

それでも自立支援を促すのは、

頑張っても無理なラインを少しでも遠くに出来るように(たとえば家での生活が出来ないという状態にならないように)、

出来る状態の維持や向上を目指して応援する為に、

というところで意味があります。

その為に介護や医療の専門職や地域で協力する人がいるんですよね。

 

今までの自立支援を考えると、

人が直接的に関わって自立支援を促すのが、中核であったとも言えると思います。

介護職のメインスキルでもある介護技術も、利用者と職員の安全性に加え、自立を促せるポイントはどこか考えて行うのが基本にあったりするので、

人と人とで関わってどう支援していくかを考えられたものが多くなっています。

人✖️テックの自立支援

一方で、テクノロジーが急激に発達しているのは周知の通りですが、

自立支援を基本とする介護の在り方にも影響をだしはじめています。

また、ロボットやAI、各種デバイスの進化で介護や障がいの現場にもどんどん活用されてきています。

 

人とテクノロジーによる支援でそれぞれどんな違いが関係してくるんでしょうか?

 

ざっくり考えてみました。

 

人による支援は、

•その人のその日の心理や身体状態に合わせて対応を変えられる

•臨機応変に細かなプラン変更が可能

•人と人同士なので、本人のモチベーションを上げやすい。維持しやすい。

•支援者の労力や時間、人数が必要。

•支援者と利用者に契約関係が必要な場合が多い

 

テクノロジーによる支援(ロボットやAI、IOT機器の活用など)は、

•買い物など日常生活に求められることはある程度目標達成できるようになる

•機械が補完している状況なので、補完された部分の生物的な能力は退化する可能性がある

・身体機能の補完により、歩けないはずの人が歩けるようになるなど従来のリハビリだけでは到達できない目標を達成できる可能性がある。(乙武さんの義足プロジェクト、人口眼よる視力回復、脳への電極チップ埋め込みによる認知症やうつ病治癒など)

•ネット環境や電力がないと動かない場合がある

・現行は初期費用が高いが、今後人が行うよりコスト安価になる可能性がある

 

どちらによっても偏りはあるので、様々な人に対応できるような支援をするには、

人のパワーもテクノロジーによる技術も必要だと思います。

高齢者や障がい者の問題は、

・人じゃないと解決できない問題

・テクノロジーじゃないと解決できない問題

がそれぞれあるからです。

 

人✖️テクノロジーでどのように支援をしていくかが、

これから介護でメインになる支援のあり方だと思います。

実際の現場でも、車椅子など福祉用具の多機能化に合わせて、利用者にあう型は何か考えることは当たり前になりました。ただ、今まではハードレベル(素材や形など)でしたが、

これからは、ソフトレベル(AI導入、音声や匂いなどの認識など)で適応を考えていくことも多くなっていくはずです。

 

そう考えていくと、

例えばサービス担当者会議に、

介護士、ケアマネ、看護師、理学療法士、福祉用具専門員などの他に、ソフトレベルでデバイスを調整できるエンジニア職(あるいはITに関するリソース資源をうまく活用できる人でもいいかもしれない)もいたら、

もっとその人に合わせたケアの体制が構築できるんじゃないか

という気さえしてくる。

 

実際に乙武さんの義足プロジェクトのように、エンジニアとデザイナー、理学療法士らが集まって解決しようとしているものもあります。→(X Diversity 乙武プロジェクト

乙武さんの歩いてみたい!気持ちの解決法は介護や医療専門職だけで解決できる問題を超えたところで、見つかった道筋だからです。

介護専門職という枠組みだけの解決ではなく、ガチで専門職の垣根を超えた試みがこれからキーになっていくんじゃないでしょうか。

テクノロジーがやる気を削ぐ可能性

人とテクノロジーの組み合わせで生まれる良さはありつつも、

やはり注意点もあります。

 

 

たとえば身近な例だと、

車があるのに歩いて5キロ先のスーパに行くのはイヤだし、

スマホでLINEが出来るのに、わざわざ手紙で何度も連絡を取り合うのは、労力も時間がもったいない気がしてくる。

なんてことになっていないでしょうか?

 

便利さがもたらした心理的な弊害です。

 

最近だとAIやIOTなどの技術でスマート家電も出てきたり、インターネットの発達でSNSをはじめ人との繋がりも簡単になりました。

どんどん便利になってきています。

 

もしかしたら、もう早すぎてついていけない。

という人もいるかもしれませんが、そんなのお構いなしで便利さは進んでいっています。

出かけなくても、Amazonで食料や物は大体手に入るし、

料理しなくても、WEB注文で美味しい食事が届く。

わざわざ遠くの人に会いに行かなくても、テレビ通話やSNSでコミュニケーションはとれる。

VRやARといった技術も一般化されつつあります。

 

車輪の発明や産業革命など歴史的にも見ても、

テクノロジーの発達による便利さは環境や人の考え方まで変化をあたえてきました。

 

自立支援の話に戻ると、

そうした便利すぎる時代の変化によって、自立する気持ちをそぐんじゃないかという危惧もあります。

 

今までの自立支援のアプローチであれば、足が悪くなって買い物にいけなくなりつつある状況だったら、

•足のリハビリをする

•車椅子や杖など福祉用具を使う

・ヘルパーや補助できるサービスに頼む

などをして、買い物に行ける方法を考えたわけですが、

 

もうアレクサなどの音声認識のAlに欲しいものを言えば、外に行かなくても買い物が完了できてしまう状態になってきています。(気になる方はアレクサ 音声ショッピングなどでググてみてください)

 

つまり、

買い物をするのに下肢筋力の維持や体力の維持はそこまで求められなくなる。

 

ケアプランで買い物に行けるようになることを目標にしたとしても、

運動機能の改善ではなく、ただシステム環境を整備するだけで達成出来てしまうようになる。

ってことです。

 

僕はここがちょっと怖い気もしていて、

早く効率良く目標達成出来ることは素晴らしいことなんだけど、

目標の過程で得られたはずの運動する機会や認知機能を改善する機会など

を失わせることにも繋がってしまうんじゃないかという気もしています。

 

たとえば

お年寄りに買い物に行きたいという目標

⬇︎

同居の介護家族的には危ないからやめて欲しいなどの気持ちもあった

⬇︎

本人のリハビリの姿勢や元気になる姿を見てだんだん家族も応援する気持ちが出る

⬇︎

実際に買い物に行けるくらいに回復

⬇︎

本人の意欲アップ、機能維持や向上、人間関係の維持や改善

⬇︎

その他の活動参加や役割もできる

もし過程を飛ばして、買い物ができることをすぐに達成しまっていたらと、その間に熟成されるもの(本人や周囲の心理、身体や精神の機能改善など)を省いてしまう可能性があったかもしれません。

すぐ目標を達成できる良い部分もありますが、他のものも追いついてこないと次のステップに繋がらないケースもあるでしょう。

 

テクノロジーによる便利さの弊害からのバランスをとる意味でも、

やっぱり人が関わる支援の大切さはあると思います。

諦めない人、前向きに過ごせる人を増やす

人とテクノロジーの掛け算で出来ることの強みは、様々なタイプの人の支援に対応できることです。

要はその利用者の変化に合わせて、人で支援したり、テックで支援したり、両方組み合わせたりしてくいくわけで、

・介護レベルの変化に合わせられる

・人や資源の無駄が減る

・市場における介護サービスの多様化

が起こって、今まで諦めるしかなかった段階(歩けなくなったら在宅での独居は難しいなど)を遠ざける可能性があります。

 

また、高齢や障がいによる不自由さが軽減され、

「まだ、やれる!」人が増えれば、経済の活性化にもつながるかもしれない。

 

介護の仕事をしていて、要介護状態になったお年寄りたちからは、よくこんな言葉を聞きます。

「もうこんな身体になっちゃったら、もうダメだわ」

 

でも、本人たちにちょっとした活躍できる環境を用意をすると、楽しく参加されるし、

やっぱりプライドもあるのがわかる。

そんな人がとにかく多いんですよね。

 

「もっとみんなが活躍できる何かがあればいいなぁ」と常々思う。

老いて障がいを抱えたとしても諦めない人、前向きに過ごせる人を増えれば、現行で頑張らなきゃいけない現役世代の不安も減らせるはず。

今後の支援の変化に注目していきたい。

 

今回は以上となります。

読んでいただきありがとうございました。

 

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