今回は色×介護をテーマにした記事になります。
ちょっと前までは介護施設といえば、真っ白な外観内観のいわゆる『施設』のようなイメージもあったかもしれませんが、最近は介護施設も観葉植物置いたり、カーテンの色を明るくしたり、ライトアップまでしちゃったりとお洒落な雰囲気な事業所も出てきました。
食事も同じような色の食材ではなく、彩りがあった方が食べる意欲出ますよね。
服装でも好きな色だとなんだかやる気が出たり。
割と『色』が僕たちの気分に与える影響って大きくないでしょうか?
高齢になると「老い」を感じ、気持ちがネガティブになりやすく、色からやる気をもらうのも一つの手段です。
今回はケアに生かせる為の色の心理についてポイントを説明します。
色が与える効果
まず、色が与える効果はどのようなものがあるのでしょうか?
・自分自身の気持ちにも影響
・相手の気分にも影響を与える
・物や空間の認知に影響
といった効果があります。
それぞれ人によって好きな色や自分に合うと感じる色ってありますよね。反対に「この色は苦手」という事も。「青は好きだけど、赤は苦手」のような感じです。
人は好きな色を見ると、気持ちが上がりますし、嫌いな色を見ると、避けようとする心理が働きます。
こうした効果を知っておくと、
コミュニケーションや環境づくりなどを行う福祉の仕事では役に立ちます。
ポイントが分かれば、ケアをする上で「この色を取り入れてみよう」「この色は外そう」という部分が出てくるので、必要に応じて活用してみてください。
各色ごとの心理特性
各色のイメージは、人の心理に影響を与えていきます。
下記で色ごとに人間の心理に与えるイメージや効果を一覧にしました。
赤の心理
【長所のイメージや効果】
最も記憶に残りやすい色。「生」をイメージさせ、意欲的でエネルギッシュ。インパクトがあり、活発さがある。
【短所イメージや効果】
「血液」の色でもあるので、本能的に戦いや危険などを連想させる。また、現状に対する怒りや不満、焦りの現れを表し、理性や知性の低下をさせる効果がある。
黄色の心理
【長所のイメージや効果】
伸びやかで光輝くイメージがあり、前向きで希望に満ちた気持ち。人懐っこい親しみやすさがあり、社会適応能力が高い状態やコミュニケーションを求めている心理。言語能力を高める効果がある。
【短所のイメージや効果】
親しみやすさの反面、子供っぽさや幼稚さがある。軽率な印象を与える。
オレンジの心理
【長所のイメージや効果】
親しみやすさと活発さを備えた色。解放的な心の状態を表す。誰もを受け入れるような明るく親切なイメージ。社交的。
【短所のイメージや効果】
人とコミュニケーションを取りたい心理(黄色)と自己主張の心理(赤)を合わせた色なので、自分からオレンジ色を趣向する人は多くない。
白の心理
【長所のイメージや効果】
清廉潔白。真面目さや誠実さの表れ。生と死、終わりと始まりを連想させ、神聖で上品なイメージ。光を透過させる色の為、若々しさを与える効果もある。
【短所のイメージや効果】
空白なイメージから、孤独や虚無感。格式の高さから、気軽に頼りづらい。
ピンクの心理
【長所のイメージや効果】
人間の臓器の健康を表すので生命力の表れでもある。平和で優しいイメージ。女性的。幸福感を与える印象があり、警戒心を解く効果がある。
【短所のイメージや効果】
依頼心や依存心の心理状態の表れ。特別に扱われたいなど承認欲求や自己中心的な心理状態の時に好まれる色。
青の心理
【長所のイメージや効果】
海や空の色でもあり、理想の象徴の色。知的さ冷静さの印象。勲章などにも使われることがあり格式の高さもある。
【短所のイメージや効果】
距離感を作る、よそよそしさがある。冷淡色でもある事から、冷たさや悲しみや憂いを感じさせる色でもある。
緑の心理
【長所のイメージや効果】
植物の葉の色から生命を感じさせ、健康や自然的な印象。落ち着いているのに冷たくないバランスが取れている色。平穏で、リラックスできる色。心身の回復。血圧を安定させたり、免疫力を上げる効果を促す作用もあるとされている。
【短所のイメージや効果】
刺激がない色なので、消極的な印象効果がややある。
紫の心理
【長所のイメージや効果】
神秘的で高級感のある印象。特別感を周囲に印象づけられる。興奮色である赤と沈静色である青が同居している為、上品さと下品さを合わせた特殊さがある。一方で、淡さのある紫色はストレスを解消させ、気持ちを楽にさせる効果もある。
【短所のイメージや効果】
矛盾や混沌、不安を与える色。人間の健康としても紫色になる状態は不健康と関連づけられる事が多い。
黒の心理
【長所のイメージや効果】
落ち着いていて、気品が高い。意思の強さを感じさせる。全てを覆い隠す色なので、怒りや悲しみもマイナス感情の抑圧や人と関わりたくない心理にも現れ、自分を守る防衛心理の色でもある。
【短所のイメージや効果】
沈黙や死を象徴する色。権力などをイメージさせ、威圧感を与える。人との距離を作る。
茶色の心理
【長所のイメージ】
土や木のイメージから、温もりや安らぎの印象。茶色の渋さは暖かみや円熟感があり、心理的な欲求を満たす感覚を得やすい効果がある。
【短所のイメージ】
渋みから、老年感が出てしまう。
灰色の心理
【長所のイメージ】
白黒つけずに混ざり合ったハッキリしない曖昧さが、逆に暖かさを感じさせる。主張しない気遣いがある印象。
【短所のイメージ】
疲労や無気力感を表す色。曖昧さや不安を与える印象があるので、頼りにはしづらい。
色の濃淡について
コントラスト(彩度)が濃いと主張が強くなり動的なイメージがあり、淡いと優しくリラックスして気持ちを楽にするイメージがあります。色を淡くすると、マイナス面の心理的イメージも薄れます。
高齢者のケアに活かせる場面
上記で挙げた色を状況に合わせ、使い分けていきます。
介護現場で色を考えた場合は、
・職員や利用者に与えるモチベーション効果
・利用者への物や空間の認知効果
が期待されます。
コミュニケーション面と環境面でこれらの効果をみていきます。
コミュニケーション
介護は利用者さんとのコミュニケーション構築が不可欠の仕事です。
介護する側がまず注意するのは服装です。
介護現場で黒い洋服などは基本避けた方がいいです。
攻撃的な赤色や威圧感のある黒などは不安や焦りをイメージさせやすいので使用する際は注意が必要だからです。
オススメは、親しみやすさのある黄色やオレンジ、リラックスや優しさをイメージできる緑やピンクなどの色は介護現場には合うと思います。
また、主張の強い濃い色よりは、優しさのある淡い色の方が相手へ受け入れやすい印象を与える事ができます。
介護施設のユニフォームで緑やピンク、オレンジの淡い色を採用しているところが多いですが、これは実際ケアの面で理に適っているのです。
あと加えて重要なのは、人による好みの要素もあります。例えば、知的な印象の方が好きな人は青い洋服を来ている人の方がスマートに感じます。一方で、黄色い洋服をきている人は幼稚に見えて、コミュニケーションで大事な話はしたがらない。なんて事もあるかもしれません。
介護でコミュニケーションを取る際は相手や状況に合わせて、見えるイメージを変えるとより効果的です。
環境
高齢で介護を受ける方は、認知症や精神疾患などの症状、老化により目が見えにくい、孤独感を感じて鬱っぽくなりやすいなどの状態だったりします。
この辺りを配慮して環境作りを行っていきます。
環境を作る上での配色のポイントは
・明るさ
・暖かさ
・落ち着き
・分かりやすさ
です。
①明るさ
→採光しやすくしたり、明るい色を取り入れることで気持ちも前向きになります。例えば、部屋のカーテンの色がグレーだと「なんだか、ぼんやりした気分」になったりしますが、淡い黄色いカーテンにすると「気持ちが晴れやかな気分」になるという感じです。
②暖かさ
→寂しさや孤独感を感じている人の不安を軽減できます。また、高齢になると寒がりな方も多いですが、同じ室温でも暖色系の色の雰囲気の部屋にいると暖かみを感じる場合もあるようです。
③落ち着き
→生活する環境では、落ち着いて過ごせる配慮も重要です。とりわけトイレや入浴、就寝環境は平穏な気分で過ごせた方がいいですよね。不安や焦りを感じやすい人へは、落ち着いてリラックスできる印象効果のある緑や茶色などを部屋に取り入れると良いです。
④分かりやすさ
→例えば、部屋全体が茶系の床や置物で統一されているのであれば、黄色い文字などは見づらくなってしまいます。白内障の方は白っぽいものや黄色いものはほぼ見えなくなってしまいます。その為、注意書きや良く使うものなどは、その人の身体状況や精神状況で認識しやすい色の方が良いです。
まとめ
・色の効果で人の気分は変わる
・介護でよく使える色はオレンジ、緑、ピンク、黄色。ただし人の趣向や状況で変わるのでケースバイケースで合わせていくと効果的。
・コミュニケーションの場面と環境作りで配色は重要
ちなみに、僕は利用者さんとコミュニケーションを取る場面ではオレンジ色のポロシャツ、家族との契約や会議などで真剣な話をする場合は青系のシャツなどを着たりして使い分けていました。
場面ごとでどうやったら安心して頼ってもらえるかを考えると、仕事にも活きる気はしています。
今回は色と介護に関するお話でした。
読んで頂きありがとうございます。
どこかでお役に立てたら幸いです。
【参考文献】介護に役立つ色彩活用術/カラーコンサルタント南涼子
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