介護事業所を自分で立ち上げてやってみたいというとき、
・資金はどうしよう
・場所はどうしよう
・事業計画書はどうしよう
となると思いますが、
その前にどんな目的で介護を始めたいと考えるでしょうか?
もし、自分の中で「こんなケアがしたい!」と具体的な希望があるならば、
開設する場所はめちゃくちゃ重要です。
今回はそんなお話です。
なぜ、開設する場所が重要になってしまうのか?

理由は、
「○○の事業所みたいに自由に色々なケアをしたい」
「新しく思いついたアイデアを形にしたい」
と思っていても、
介護保険を使って報酬を得るというモデルでやる以上は、
管轄の自治体のルールに縛りを受けるからです。
デイサービスや訪問介護、小規模多機能型グループホームなど、
国の制度でサービスの基準を決められている部分ももちろんあるのですが、
各自治体によってサービスとして認められる内容の解釈も異なる場合が
結構あります笑
たとえば、デイサービスを例にあげると、
よくホームページや写真などで公園に出かけたり、外食に行かれるような様子の事業所もありますが、
こと「外出に関して」デイサービスで提供する機能訓練などとは認められずNGを出している自治体もあります。
とある自治体では、それでも外出をしたことが後で発覚し、報酬返還や指定取り消しになった事業所もあるようです。
あらかじめ、個別サービス計画書への記載や合理的目的があればOKな自治体もありますが、厳しいとこは厳しいです。
他にも生活相談員の認定の資格基準などもバラバラ違っていたりもします・・・。
つまり、制限がユルめの自治体とキビしい自治体があるんですよ。
ここでお伝えしたいのは、
もし自分のやりたいケアがあって、介護事業所を開設しようと考えているのであれば、
開設予定のエリアの集客見込みや物件、職員募集などとも並行して、
「実際やろうと思っていることがマジで出来るのかを開設までによーーーーく確認しておいた方がいい」
やりやすさも違うので。
ということです。
どうしても場所への拘りがあるのであれば、やりたいことの方は妥協せざるを得ないこともあるということは念頭に置いておいた方がいいでしょう。
どうして地域ごとに基準がバラバラなのか?

大元の介護保険法や老人福祉法に関する改訂などは、国会や審議会でルール化されるので、一律の基準にはなっています。
介護報酬などは区分によって地域差はありますが合理性のある基準が定まっていますし、サービスの人員数や建物の面積の基準なども定まってはいます。
そうでないと公平性が保てなくなってしまいますもんね。
でも、なぜ地域ごとにバラつきのある基準もあるのでしょうか?
あくまで僕個人の見解なのですが、
介護サービスの管理にも自治体特有の裁量もあるべきだと考えられているからだと思います。
これは介護保険のサービスに限らず、都市計画や教育、ビジネスなどあらゆる事業においても、
その自治体独特の色もあるべきと考えられているからこその、
地方自治だと思います。
たとえば、
関東と関西で人の感覚も違いますし、地方と都市部でも求められることは変わってきます。
〇〇市と□□市では、ニーズや規模、財政状況、資源がそれぞれ異なるので、それらに対応するための打ち手を裁量で変化させられることも必要にはなってきます。
介護サービスに関して考えてみると、
・認知症に対する考え方、受け入れ方
・サービス事業者の充実度、参入具合
・管理する行政側のリテラシーや負担
など
その自治体に合うかどうかも検討しながら認可しているはずなので、
国が考える大筋から外れた、細かな部分の調整は地域ごとの自治体に裁量を任せているのではないかと考えられます。
なので大きな法改正があった時は、毎度
「国は〇〇を発表したけど、ウチの地域ではどうなるんだ?」
という状況にもなっています。
独立してやりたいケアを実現したい人はどうすればいいか?

やりたいケアができる自治体でやる
したいケアが具体的に決まっているなら、
まずは、そのケアややり方が認められる自治体を探すべきです。
つまり、
既に同じようなチャレンジをすることが認められている事業所がある地域
で開設する。
これなら、ほぼ間違いなくやれます!
その地域であれば、行政側もニーズがあり、地域住民にも認められるべきと判断して、指定をしているわけなので、
サービス事業所数が多過ぎて制限がかかったり、問題事例が出ていない限りは認められる可能性は高いと思います。
なので、開設を予定している地域で先行事例の事業所がないかチェックをしましょう。
その地域でできるかどうかは、
〇〇市 サービス名(通所介護や訪問介護・・など) 〇〇(外出・・など)
で各自治体ごとのQ&A集やガイダンス資料などが検索できると思います。
もしそれでもよく分からなかったら、地域の役所の介護保険課に相当するところに確認をとってみると、教えてくれます。
自治体に認めてもらってやる

先行事例がない地域については、アプローチを練って考えて行動する必要があります。
・既存の法的な基準をチェックした上で問題がないこと
・開設予定地域にニーズがあり、求める人の数も相応いることが予測されること
は大前提だとして、
その後は行政の担当者らに認めてもらうためにも、交渉条件を揃えていく必要もでてきます。
・他地域での認められているケースがあれば、それによってどんなメリットが地域にもたらされているか
・そのケアを認めないとどんな機会損失がどれくらい発生することになりそうか
・地域のケアマネージャーや包括職員などからアンケートをとってニーズの集計をしておく
など。
あとはできることとしては、
ぶっちゃけ、先行事例がすでにどこかあるのあれば、実際に認可に成功した事業法人の責任者に、なんとかアポを取ってどういった手法を取ったか確認はしたほうがいいと思います。
というより、
もちろん、やりたいケアの異例さにもよりますが、
それくらいの行動力はないと現行の制度が意図していないスタイルの運営は認めてもらうのは中々厳しいでしょう。
行政を動かした富山型デイサービスの事例
一つ新しいスタイルで認められた参考事例を出しておきます。
2018年から法改正で「共生型サービス」と言われるものが認められるようになりました。
このサービスがどういうものかというと、
「介護保険と障害福祉の分野を一体的に行うサービス」のことを言います。
共生型サービスが正式に国から認められる前で代表的なのは、富山型デイサービスと呼ばれるサービスでした。
富山県にある「このゆびとーまれ」という事業所(デイサービス、ショートステイ、グループホームを運営)から県内を中心に徐々に全国へ広まったのですが、
当時は介護と障害支援をミックスさせるような新しいスタイルのやり方を認めない自治体もあったようです。
なぜなら、
介護保険と障害福祉をミックスするということは、
認知症の高齢者と知的障害のある人を一緒にして通所サービスを行うということ。
専門分野も似ているようで違うので多方面の知識も求められますし、リスクも複雑化します。
運営はカオスになるんじゃないかという危惧もあったからです。
現在では、
・地域でのニーズや雇用への対応
・一つの保険に頼りきりにならないため、財政の安定化に繋がる一つのやり方
・ミックスすることで、むしろ利用者が互いに症状を緩和する可能性もある
・近年注目されているダイバーシティ(多様性)を取り入れたやり方である
など
など利点も公になってきました。
富山型デイサービスの認知のされ方の歴史は、これから新しい取り組みをしたい人にとっても参考になるんじゃないでしょうか。
共生型サービスの詳細についてはこちらから。(厚生労働省、社会保障審議会資料より)
「このゆびとーまれ」の事業所ホームページはこちらから。(うちら富山型デイサービスやちゃ!より)
保険外サービスを使うことも考える

介護報酬から収益を安定的に獲得したいのであれば、介護保険内でのサービス運営が良いのですが、
仕組み上どうしても、行政の制約が出てきてしまいます。
報酬の財源が国から出ているお金なのだからそりゃ当たり前ですよね。
そこを突破してでも、自由にやりたいのであれば、
「介護保険外のサービスを使う」
のも一つの手です。
保険外サービスを使えることは、厚生労働省もサービスの弾力性を拡大するために、認めています。
調べれば今では色々なところでやっているので、参考事例は簡単に見つけられるかなと思います。
デイサービスなら
・介護保険利用時間外の延長サービス
・宿泊付きのサービス
訪問介護であれば、
・旅行や遠方の外出の付き添い
・ペットや同居家族分の調理補助
など
細かすぎて、とても記載できないのですが、
利益度外視で保険外サービスというワードも使わずに、
NPOやボランティアのような活動をしているケースもあります。
保険外サービスの利点は自由さ。
介護保険内のサービスではNGですよーーー!
と言われる部分にもサービスを提供することができるようになります。
もちろん最近では、行政側もこうした保険外サービスとミックスしたりする事業者も認知しているので、地域内の市場が荒れたり、保険内との併用を認めるかどうかのチェックはあったりします。
とはいえ、
保険外サービスにも弱点があります。
介護が求められるサービスのほとんどは介護士など必要な労働集約型のサービスです。
介護保険を使ったサービスであれば高単価にも関わらず、利用者は保険の割引が効いた状態で利用ができますが、
保険外サービスは介護保険が使えないので、当然割引はできません。生活保護の方ですら、適用外にもなったりします。
また、保険内利用の算定時間内に保険外サービスも時間で算定して、同時に収益化かするのもNGになっています。
現状、保険外サービスのみで運営をしていくのは、厳しめで、
高所得者層や部分的に使って必要な料金を払える層でないと利用者を獲得するのは至難の技です。
一応、
東京の都心部にはいくつか保険外サービスのみで運営しているヘルパー事業所もあるようです。
とはいえ、利点もあって、
・利用者のニーズにあった内容のケアを保険の枠組みを超えてサービス提供できる
・地域や利用者層によって単価を調整し、高収益をあげられる可能性もあるにはある
・介護報酬改定の煽りをダイレクトには受けないで済む
メリットはあります。
現実的に保険外サービスも考慮して運営するのであれば、
保険内サービスと保険外サービスをミックスして利用できるようなスタイルの運営の方が、
収益は安定しやすいかなと思います。
人との繋がりを作っておく

人脈があれば上手くいく!
というわけでは決してないとは思いますが、
繋がりを持っている人は打つべきタイミングで打つべき手をうてます。
経営者同士の横の繋がりを利用して、
「このケースだったら〇〇の自治体ならいけるかも!!」
という情報もあったりすると思うので、ガチで繋がりは大事にしたほうが良いです。
フランチャイズで加盟店として参入して、開業するのもノウハウが入ってくるのでアリではあります。
また、
地域の情報であるならば、実際のその地域の同系統サービスで働いてみたり、
交流会や研修などに参加してみるのも良いと思います。
また、最近ではオンラインでの交流も盛んになってきました。ZOOMを使った交流会も連日開催されたりしています。
その他、音声SNS「Clubhouse」ではオフレコな話もしやすく、横の繋がりもできやすいのでオススメです。
影響力をつける

また、繋がるに近い考え方ですが、
自らがハブとなり影響力を持てる人になる
のも現代ならではの手法になってきています。
かつては影響力があると言えるには、
大企業の社長をやるとか、テレビで有名になる、
とかでしたが、インターネットが出てきて激変しました。
最近だと、芸能人ではないけれど、
それぞれの得意分野で注目を浴びて、
Youtubeやブログ、TikTok、Twitter、Instagramなどでたくさんのフォロワーを獲得している人達をインフルエンサーと呼んだりしています。
今メディアで一番強力なのはYoutubeから出てくるインフルエンサーですが、
実際に彼らがビジネスで動いたりして上場企業の株価が大きく変動することさえある事態にもなってきています。
フォロワーさんにパワーを借りて、やりたいケアを実現できる環境を整えるということもできる可能性はあります。
そこまではいかなくとも、業界の中で自分を売って、マーケティングとやりたいことを実現可能な力を同時につけていくこともできるので、
SNSでインフルエンサーになろうとチャレンジしてみることの価値はあります。
独立して開業する場合は、資金援助も必要なので助成金や補助金の申請をしていくことが多いとは思いますが、
自分の影響力を使ってクラウドファウンディングで支援を募るのも出来るようになってきてきます。
「インフルエンサーなんて、なれるのはどうせ若い子だけでしょ」と思われる方もいるかもしれませんが、
中高年や御年配の方でも最近はフォロワーを急激に伸ばしている人もいます。
やったもん勝ちですよ。
終わりに
実際立ち上げする時は、もっと細かいところまで考えて行かなくてはいけないと思いますが、
「ちゃんと思っていることをカタチにする」
には、何が必要になりそうかこの記事で考えてみました。
正直いって、僕自身は経営者ではありません。
デイサービスの管理者をやったり、コンサルや経営者の人と接してたり、セミナーなどに参加した中での情報を自分なりに解釈して、
こうして今回のブログ記事に反映しています。
自分の中でそのままにしていてもしょうがないと思っているので、
これから必要な方に届けばいいなと思い発信しました。
「絶対こういう経営がしたい!」
「やりたいケアがあるんよ!」
という方は、是非行動に繋げてください!
この記事がわずかにでも一助になれたら、幸いです。
今回の記事は以上となります。
読んでいただきありがとうございました。
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