ケアワーカーは利用者のセクハラとどう向き合えばいいか【介護現場の声とビジネス面どちらも考えてみる】

介護のリーダー向け

どうも!介護福祉士のなおべい(@naobei)です!

 

介護の仕事をしていて、誰もがどうすればいいか迷う問題の一つ。

「利用者の職員に対するセクハラ」

・せっかく入浴介助で着替え手伝っているのに、胸を触ってくる。

・他の利用者の介助で油断していると、お尻を触ってくる。

こうしたことに対して、

「利用者だから、認知症だからしょうがない」

ということで我慢しなきゃいけないのか。

 

今回のテーマでは単純な二元論ではなく、僕自身もデイで施設長をしていた経験も踏まえ、職員の立場と経営上の視点でどう対処していくべきか考察していきます。

 

高齢者の性欲についてのテーマはこちらの記事で。

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プロとして我慢するべきかの問題 

男性、女性に関わらずある

セクハラをする人とされる人の関係性は、

やはり男性利用者から女性職員に対するものが圧倒的に多いです。

とはいえ、女性利用者から男性職員へのセクハラもあります。

僕も何度やられたことか・・・。

 

やっかいなのは、やる本人達に悪気がない場合が多いんですよね。

なぜかと言うと、老いによる脳機能障害によって性的な欲求の抑制がバグってしまっていることもが大半だから。

しかし、やられた方の職員側は、

 

「そんなことを許すために、介護の仕事をしているんじゃねーわ!」

 

と思うし、人によっては酷く傷ついて退職を考えたり、あるいは相手への虐待に発展する事だってある。

深刻な問題なんです。

参考書も職場も教えてくれない

病院や介護施設など、どこの職場でも起こってしまっている問題ですが、

福祉の資格試験や職場の研修などで対処法について語られる事はほとんど聞いた事がないのが現状です。

例え書いてあっても、

臨機応変に対応しましょう、プロなんで!

的なところで思考がストップしてしまっている。

 

一方でSNSなどでは、被害を受けた人の本音の声で溢れ、それが介護業界や職場のマイナスイメージにも繋がってしまっています。

上手く対応するだけでいいのか

認知症や脳機能障害のある利用者が相手なんだから、

「臨機応変に上手くやれよ」

的な介護現場でホントにいいんだろうか

 

心配とは裏腹に、

「もう、この仕事をしていく以上は仕方ないよ」

「慣れてしまったから、もう気にしない」

という強い人も何人も見てきました。

さらに、

「減るもんじゃないし、別にえーわ」

という猛者までもいたりする。

 

けど、ただでさえ人手不足の状態の仕事環境で、

被害を受けた人に対応を全て任せるというのは違う気がする。

なぜ、イヤなことなのに我慢を求められる空気感があるのか

どうしてセクハラを受ける側が対処をし、我慢せざるを得ないのだろうか。

問題原因を考えてみました。

ほとんどの介護職が本人の為に公にしない

性に関する問題は、やっぱりプライベートな感じになります。

たとえば、

普段は超ジェントルマンな利用者なのに、女性職員とトイレ介助で二人きりになると手が伸びてくる。

なんて人も介護現場にはいます。

そうなると、ジェントルマンでもなんでもないんですが・・・。

 

じゃ、そのあとの対応はどうするかとゆーと、

基本的に公にする事はほぼない。

職員間での情報共有くらいはしますが・・・。

 

理由は、

もし、他の女性利用者に伝わってしまったら、を考えると可哀想だし、

恥をかかせてしまったら福祉職の理念とも相反してしまうから。

介護経験の長い職員や介護に熱心な職員ほどその辺は我慢して守ってしまいます。

 

なぜか、そんな空気感があるんです。

高齢者からはなぜセクハラか

小学校の低学年や保育園などでも、先生の身体を触ろうとする子供はいますよね。

けど子どもが触ってくる事に対して、

セクハラとして問題にする保育士ほぼいない。

 

介護士や看護師が受ける、

高齢者からのお触りとの違いはなんなんでしょうか?

 

おそらく「性的なものとして捉えるかどうか」の違いな気がします。

イメージも大きいかも。

たとえば、

①子どもが触ってくるのは、愛着の欲しさから。→ カワイイ

②お年寄りが触ってくるのは、性的欲求から。 → ウザイ

になってしまったり。

 

実際はお年寄りにも愛着目的での触れたい希望があるのかもしれませんが、

受け手の介護職側からは、

「そんなの分からんわ」

ってことの方が多いんじゃないでしょうか。

人手不足で同性介助が出来ない

・介護施設では、利用者の男女比としては大体7:3で女性が多い

・一方で職員の男女比は8:2くらいで女性が多い

・訪問介護の職員比率にいたっては、9:1で女性になってしまっている。

 ※平成25年度介護労働実態調査より

 

何が言いたいのかというと、

女性が圧倒的に介助に入る事が多い

という事です。

 

つまり、

男性の職員がいないなら、女性が介助に入るしかない。

 

そもそも性別の前に全体的に人手が足りないなら、

男女で個別な対応はきついですし、

女性職員にとっては異性の介助から逃げることが出来なくなってしまっています。

ちなみに、女性の介助を嫌がる男性はほとんどいません。ごく稀です。

自己決定をどうとらえるか

介護の仕事は、

利用者の尊厳を守って支援をする

ということが一つの目的としてあります。

 

しかし、利用者の自己決定を尊重してセクハラを我慢するべきなのでしょうか。

上手くかわすスキルを持つ事が全てなのでしょうか。

バイスティックのケースワークの原則

バイスティックのケースワークの原則とは、

対人援助をするようなソーシャルワーカー向けにアメリカの社会学者バイスティック氏が作った行動原則です。

 

この中に、自己決定の原則というものがあります。

端的いうと、

利用者は自分の行動は自分で決めたい希望があり、それをワーカーは支援する

というものですが、

 

バイスティック氏は、自己決定に関して、

・個人の権利は社会における他者の権利によって制限される

・社会や経済体制などに新しく重要な知識が出来る時は、再検討される

という自己決定の制限ケースについても述べている。

支援する側に権利

つまり完全に利用者本位を守る事だけに徹するのは、

必ずしも良い支援の在り方ではないってことです。

 

利用者のおじいちゃんは、あなたの身体を「触りたい」のかもしれないが、

あなたにも重要な「触られたくねーよ」という個人としての権利はあるからです。

 

僕ら支援する側にも、職務以上に大切な個人の権利はある。

そこも一緒に守ってもいかないと、

介護や福祉に関する仕事は、

おそらく良いパフォーマンスを発揮し続ける事は厳しいと思います。

 

僕らは命令で動くロボットじゃないですから。


 

支援を受ける人と支援をする人の関係は、

双方が傷つけ合わない事で成り立つ

ということを考えないといけないです。

リーダーや経営者の方であるならば特にです。

どうすればよいか

では実際にどう対応すれば良いんでしょうか?

対応策について考察していきます。

アサーティブな自己開示をする

やられた本人であるならば、

我慢し過ぎず、介助する側も自己開示する

ことをオススメします。

 

「え、いいの?」という声も聞こえてきそうですが、

 

もちろん、やり過ぎや感情の過剰な吐き出しは抑えなきゃいけません。

職員間で話しても、他の利用者にまで公にするのはよくないです。

必要以上に相手を傷つけることは主旨とズレるから。


けど、

イヤだったら、「イヤ」と言葉や態度で本人に伝えるのも介護のプロとして大事な事だと思います。

イヤなのに笑って流そうとするのは、仕事を続けていく上で自分自身のプロとして対応する気持ちを汚してしまうことにもつながるからです。

 

で、

もしリーダーなどの立場で職員がセクハラを受ける現場を目撃したら、

職員に言わせるのも大事

ということを覚えておいてほしいです。

 

もちろんフォローしたり、介入の判断のタイミングもかなり重要ですよ。

ホントにやり過ぎは、それが当たり前になって虐待に発展する可能性もあるから。

使い方を間違えた包丁はあぶないのと一緒。

 

我慢するのがプロっていう人や上司も、もしかしたらいるかもしれないですが、それは単なる思考停止な気がします。

利用者との関係性も維持出来るように、対応が続けられる気持ちのコントロールをするには、上手くぶっちゃけるのも必要じゃないでしょうか。

リーダーが考えておくべきこと

さらにもう少し、リーダーや経営者は考えておくべきことがあります。

それは、

職員から相談を受けたら、必ず対応する事。

そして、

・職員の考えにしっかり耳を傾ける。

・家族や他関係者への伝達はリーダーが一元的に管理して、客観的な目線で伝える

家族への連絡によって、家族と利用者本人との関係が悪くなることの危惧があるかもしれないが、

僕は状況を伝えるべきだと思います。

 

ただ、利用者のセクハラ行為の程度や伝えた事によって発生し得る状況も考えた上で伝えるべきではあると思う。

場合によっては、利用者のサービス終了にも繋がってしまう場合もあるからです。

 

マジでぶっちゃけていうと、

ビジネス的な目線を入れると、例えば売り上げが月30万の利用者と週2勤務の介護職員がいたとして、どちらかがいなくなったら困るかと仮に考えたら「利用者がいなくなる方がマイナスだ」と考える経営者もおそらくいると思います。

死亡や利用者の希望とは違い、施設側が伝えたことによってサービス終了という状態が発生したことになってしまうからです。

「わざわざ、伝える必要はない」とか多分なる。

  

経営層の横暴みたいに聞こえるかもしれませんが、

サービス終了になった場合の赤字リスクの怖さを彼らは抱えているから仕方ないっちゃ仕方ないかもしれない。

 

けどね。

その上でプロとしての対応や仕組み作りを行なっていかなきゃいけないです。

例えば

・浴室や個室などセクハラ防止の注意喚起ポスターを掲載する

・サービス利用前の契約時に職員への暴力行為やセクハラ行為が起こった場合にどう対処するかを丁寧に説明する。(環境的な配慮をすることや家族への連絡をする理解を得ておくなど)

・被害を受けた職員を守る委員会や担当を作っておく。

など

ちなみに僕がデイサービスの施設長をしていた時は、

堂々と別法人の担当ケアマネージャーや家族にも報告をしていました。

たとえ、相手がマイナスに感じる報告だとしても、そこで信頼がなくなる関係性ではない自信を持てていたから。


今や個人での発信が当たり前の時代です。

何も対策を取らずに職員からYouTubeやSNSで発信されたり、法的な手段での解決にまで発展する場合もある。

そうなってくると、不幸になる人が増えてしまいます。

お互い傷つけ合う人を出さない対策をとっていきましょう。

まとめ

・臨機応変に上手く対応するだけじゃなく、自己開示することも大切

・自己決定の権利は支援する職員にもある

・お互いが出来るだけ傷つけ合わない方法をリーダーは考えよう

 

セクハラ行為は、脳機能障害や認知症の人は、

判断ができないから責任能力ないと法ではされてしまいますが、

健常者がセクハラをしたら、当たり前のように

疑いレベルですら逮捕や周囲からの社会的な制裁を受けることになります。

 

利用者にそこまでの制裁をすることはおそらくないはず。

十分みんなの権利を介護職員は守っていると思う。

ホントすごいと思う。

だからこそ、自分たちの権利も守って介護の仕事を続けてほしいと余計に思ってしまいました。

 

今回の記事は、以上となります。

どこかでお役に立てたら幸いです。

【参考文献】F. P. バイスティック(尾崎新・福田俊子・原田和幸訳)『ケースワークの原則[新訳版]援助関係を形成する技法』、福祉は「性」とどう向き合うか/結城康博・米村美奈・武子愛・後藤宰人[著]